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神戸地方裁判所尼崎支部 昭和41年(ワ)270号 判決 1976年3月31日

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一  請求の趣旨

被告は原告に対し、別紙目録記載の建物(以下本件建物という。)を明渡し、且つ金一三六八万八四〇〇円及び昭和四八年三月一日から右明渡ずみまで一ヶ月金二三万八八〇〇円の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告の負担とする。

との判決並びに建物明渡部分につき担保を条件とする仮執行の宣言を求める。

第二  被告の申立て

主文同旨の判決を求める。

第三  請求の原因

一  昭和四〇年六月二日注文者被告、請負人訴外寺岡建設株式会社(以下寺岡建設という。)間に被告所有地上に本件建物を建築する請負契約が締結された。

二  その後同年六月一六日訴外尼新建設工業株式会社(以下尼新建設という。代表者は寺岡建設と同じ。)と原告被承継人前田友市(以下友市という。)との間に代金三八〇万円でつぎのとおり本件建物の建築請負契約が締結された。

1  壁下地工事、畳、建具、廊下及び階段の取付工事は尼新建設の負担とし、水道工事、ガス工事、電気工事は施主たる被告の負担とする。

2  請負代金の支払方法

第一回 着工時 支払手形 二五万円

六月末 工賃払 二〇万円

第二回 上棟時 出来高払

残工事 出来高払

第三回 残金全額

三  友市は昭和四〇年一〇月頃までの間に本件建物を約三分の一の工程まで仕上げ、屋根も葺いたので、それはすでに法律上の建物となつていた。よつて友市は、当時右建物の所有権を取得した。

四  しかるに友市は尼新建設から追加工事費の一部金七万円の支払を受けたのみで、本工事代金の支払を受けなかつた(約束手形、小切手は全部不渡となつた。)ので、昭和四〇年一一月三日尼新建設に対し、第一、二回目の代金合計金一三〇万円を三日間内に履行するよう催告すると共に不履行を条件とする契約解除の意思表示をしたところ、尼新建設は右期間を徒過したため、同会社と友市との間の建築請負契約は同年一一月七日解除された。そして、友市は何人にも本件建物を引渡したことはない。

五  ところが、その後同年一二月六日以降同年中に訴外大豊建設工業株式会社(以下大豊建設という。)は本件建物の残工事を竣工して、これを施主たる被告に引渡し、被告は本件建物を占有している。

六  本件建物は友市の工事によりすでに建物となり同人の所有に帰していた以上、第三者が残工事を竣工したとしても、附合の法理により現存建物全体が友市の所有となつた。

七  友市は本訴提起後昭和四一年六月二一日死亡し、原告が単独相続した。

八  本件建物の賃料相当額月額は、昭和四一年一月一日から同四二年一二月三一日までが金一一万六八〇〇円、同四三年一月一日から同四四年一二月三一日までが金一四万四七〇〇円、同四五年一月一日から同四六年一二月三一日までが金一七万八五〇〇円、同四七年一月一日から同年一二月三一日までが金二二万一六〇〇円、同四八年一月一日から同年二月二八日までが金二三万四六〇〇円、同年三月一日以降は金二三万八八〇〇円である。

九  よつて原告は被告に対し、所有権に基づき本件建物の明渡しを求めると共に、賃料相当損害金として、昭和四一年一月一日から同四八年二月二八日まで合計金一三六八万八四〇〇円、昭和四八年三月一日から右明渡ずみまで一ヶ月金二三万八八〇〇円の金員の支払を求める。

第四  被告の認否

一  請求原因事実中一、五、七は認めるが、二、四は不知、三、六、八は否認する。

二  被告は寺岡建設に対し、昭和四〇年七月一六日までに本件建物建築請負代金六二二万円中合計金二一三万円を支払つた。

一方友市は同年七月中旬上棟を終え、屋根に瓦を葺く下地としての野地板を張る工事までしたが、壁を塗らず、その他の工事もなさずに放置した。その段階では、未だ独立した建物とはいえない状態にあつた。

そこで被告は寺岡建設の了解を得て、同年一〇月一五日大豊建設との間に代金六一四万九〇〇〇円とする残工事請負契約を締結し、大豊建設は同年一一月一九日までに屋根を葺き、荒壁を塗り、床板を張り終り、本件建物は一応独立した建物として存在するに至つた。

三  ところで、被告と寺岡建設との間の契約では工事の進行の都度所有権が被告に帰属する旨定められ、尼新建設と友市との間では代金は出来高払いである旨定められ、被告と大豊建設との間では工事完成までに請負代金のうち九割弱を支払う約であつた。

四  従つて、友市が本件建物の所有権を取得したことはなく、被告がその所有権を原始取得したものである。

第五  証拠(省略)

(別紙)

目録

尼崎市南〓口町三丁目三六〇番地の二、三五九番地の六地上

家屋番号 三六〇番の二

木造瓦葺二階建店舗兼共同住宅

床面積 一階 一九七・〇三平方メートル

二階 一九二・一一平方メートル

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